2019年7月14日
報告ー 「フィリピン人一家」へのヘイトデモ事件から10年―議会を浸蝕する差別主義・レイシズムを許すな!7.14集会
今から10年前の2009年、埼玉県に住むフィリピン人一家に対し、在日特権を許さない市民の会等の差別・排外主義団体はその追放を声高に叫び、激しく攻撃した。またこの年には京都朝鮮学校襲撃事件も起こしている。こうした事件をきっかけに在特会等の差別・排外主義団体は勢いをつけ街頭での活動を活発化させながらヘイトスピーチをまき散らすようになった。こうした事態に対処するため、2016年にヘイトスピーチ解消法が成立すると、在特会の会長であった桜井誠は日本第一党なるものを立ち上げ、同時に東京都知事選に立候補した。議会にも触手を伸ばしたのである。
この集会は日本第一党のようにこれから議会に進出しようと目論んでいる者のみならず、現に議員である者がいかに議会を腐らせてしまっているのか、その背景や現状に迫る。
先ず、研究者の立場から東大大学院の明戸隆浩さんにお話を伺い、また常に現場に立ち被害者の視点から取材をしてきた神奈川新聞社の石橋学さんには差別根絶条例の制定で焦点化している川崎の現状を語っていただいた。
明戸さんは石原都政時代に遡り、政治家によるヘイトスピーチ事例を取り上げながら日本第一党、日本国民党、NHKから国民を守る党などの差別・排外主義団体の問題点について言及した。その根幹にあるのは旧植民地時代の優越感であり、連綿と続く無意識の差別感情であろう。しかし、露骨に差別言動をしているにもかかわらず、彼らは自らが差別しているという事実を否定する。それは「歴史否定を一般化した概念で、既に生じた差別による加害を否定したり、過小評価したり、正当化したりする」ことで成り立っている、と語る。
引き続き石橋さんからは、ヘイトスピーチを根絶するため川崎市が提案している「『(仮称)川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例』(素案)について」の説明があった。この案ができるまでの激烈なヘイトデモの歴史も踏まえ、この条例について熱く語った。私もカウンターには何度か加わったがともかくひどいものであった。
それはともかく、 この条例案が画期的なのは、ヘイトスピーチ解消法が理念法であるのに対し50万円までの罰則規定を設けたこと、「ヘイトスピーチにつながっていく土壌に、直接対処する幅広い条例」であることだ。ただ、ネット上のヘイトスピーチに対処する施策については不十分と言える、とも語った。
いずれにしろ、議会を浸蝕する差別主義・レイシズムとの闘いはまだ始まったばかりである。